とある性別違和の記録

自分の性別に違和を感じたわたしが、性同一性障害の診断を経て戸籍変更に至るまでを綴ります

顔面女性化手術について

わたし、自分の顔に強度の劣等感を抱いておりまして。

元はと言えば、電車で知らないおじさんに「半魚人みたいな顔の女」って言われたところからなのですが、よくよく思い返してみると、思春期の頃から醜形恐怖に取り憑かれていたなあ、と。当時「整形したい」と言って親に怒られたっけ(遠い目)。

それはともかくとして、性同一性障害の身体治療の一つに、「顔面女性化手術(Facial Feminization Surgery/略称:FFS)」というものがありまして。読んで字の如し、MtFGIDが顔を女性の見た目に近づけるための手術ですね。SRSが普段人の目に入らない場所を手術するのに対し、こちらは顔という、人が真っ先に見る部分を手術することになります。

今後性別を変更して生きていこうとしているわたしにとって、ぱっと見の印象は大変重要です。美醜の判断とは別に、顔の印象で性別を判断するのはよくあることで、今現在服装と乳房の形である程度女性に見えることで違和感なく社会生活を営んでおりますが、更に顔を女性らしく見せられれば、マニッシュな格好をしていても女と認識されるはずです。なお、ここでは「女性らしさ」「男性らしさ」とはなにかといったルッキズム的議論はひとまず措きます。頭蓋骨の形に大きな性差があるのは論を俟たない事実なので。

 

FFSについて

では、具体的にFFSって何をするの? という話ですが、一口にFFSといっても、やることは色々あります。顔、というか頭蓋骨の形は千差万別なので、何をするのか(あるいは、何を優先するのか)は頭蓋骨の形によりまちまちです。

大まかにいって、

  1. 額から眉骨にかけての形を変える
  2. 頬骨の形を変える
  3. エラから顎先の形を変える

の3つがありますが、他にも鼻の形を変えたり、目の形を変えたり、大掛かりなものだと顎全体を引っ込めたりといったこともやる場合があります。

ここで重要なのは、「どこをどう手術するかを考えるのは自分ではない」ということです。

手術の計画は、頭蓋骨の形や全体のバランスを考慮して医師が決めるので、もちろん自分の意見も反映はされるし最終的な決断は自身で下すとはいえ、何をやるかは専門医の判断に委ねられます。ですので、まずはカウンセリングを受けて、どういう形で手術をするか、それに必要な費用はいくらか、を聞いて、やるかやらないかを決めることになります。

 

カウンセリング

ここからはわたしの場合の話です。

3月にSRS後の3ヶ月検診で山梨大学の百澤先生の診察を受けましたが、この時にFFSの相談をしました。

元々山梨大学医学部附属病院の時に形成外科のWebページには、FFSはここではやっていないので、紹介しますという旨が書かれており、じゃあ紹介してもらおうとなりました。メールをくれれば紹介しますよということだったので、早速先生にメールを送り、杏林大学の大島先生をご紹介いただきました。

で、今度は大島先生にメールを送り、初診の日取りを5月16日と決めました。

 

当日。お休みを取って杏林大学医学部付属病院に。

大島先生にお会いして、「どこを直したいですか?」と聞かれたので「正面から見たらそれほどでもないですけど、横顔のラインで額から眉にかけてが出ているので……」と応えると、「いや、正面から見ても結構目立ちますね」と一刀のもとに斬り捨てられ(笑)。たしかにそのとおりなので、遠慮なく突っ込んでくる言い方に好感を持ちました。

ほか、やはり横から見たときに口先が出ていることが気になっていたのでこれも告げると、たしかにEラインで口先が出っ張るので、例えば上下の顎を短く切り詰めることもできるけど、歯を矯正したりで時間もかかるし、年齢のことを考えるとさっさと終わらせたほうがいいから、顎先と鼻先を出して目立たなくしましょう、とのこと。

このあと、頭蓋骨のCTスキャンを取って頭蓋骨の形を見ることになりました。

 

総合病院の便利なのは、こういうときささっと必要な検査ができること。早速CTスキャンを取って、診察に戻ります。

まず額の部分ですが、骨の下に大きな空洞があって骨自体は薄いので、骨を切って周りを削り空洞の中に落とし込んで、プレートで上から塞いで人工骨で埋めます、とのこと。あとは眉骨を削って小さくします。

顎先は人工骨で盛り上げるのと、エラはそれほど目立たないけどこれも切り落とします、とのことでした。人工骨の支えにプレートを入れるけど、額のプレートはいずれ溶けるけどこっちは溶けないので、後日改めて手術で取り出します。そのときに鼻も出しましょう。となりました。

また、骨を切ったり削ったりするので、余った皮が弛みます。年齢を考えるとこれは避けられないので、手術後落ち着いたところでフェイスリフトをしたり、HIFU(ハイフ)の施術でたるみを取りましょう。とのこと。こういうことを遠慮なくおっしゃるのは本当に好感がもてます。

 

続いて、実際の手術の様子をビデオで。

額は頭頂部を切開して革をベロンとめくり、頭蓋骨を露出させて切ったり削ったりします。顎は口の中を切開してそこから器具を突っ込み、切ったり削ったり、人工骨を入れます。ということで、結構エグい動画を見せられました。グロ耐性ないと辛いかも。

費用は約130万円、日程はちょうどキャンセルが出そうなので8月末が最速になります、と言われ、この時点でほぼ決意は固まりました。後日改めて、これでお願いしますとお返事をして手術決定です。8月29日入院、30日手術、9月2日退院となりました。

 

術前検査

会社に相談し、入院期間の休暇も了承されて、準備は着々と進みます。

大島先生からは、手術日の1ヶ月前からホルモン治療を止めてくださいと言われていたので、こちらも7月23日にホルモン注射を受けたのを最後にストップ。SRSのときも術前1ヶ月はホルモン禁止でしたが、この時は頭痛に悩まされました。覚悟はしていたものの、今回もやはり頭痛が頻発して閉口しました。

そして、8月15日に術前検査です。

大島先生の診察で手術内容の最終確認があり、入院費や全身麻酔の費用も含め、総額140万円と提示されました。もちろんこれは問題なし。

それから、偏頭痛の予防として飲んでいる漢方が手術に影響する可能性があるということで、この翌日から服用禁止になりました。同じく、どんな成分が含まれているか分からないとのことで、サプリメントの類も禁止。

また、コロナ感染したら入院できなくなるということで、入院までは不要不急の外出は避けるようにとのお達しでした。

 

手術まであと2週間ということで、俄然期待が湧いてきます。どんな顔になるのかな。