とある性別違和の記録

自分の性別に違和を感じたわたしが、性同一性障害の診断を経て戸籍変更に至るまでを綴ります

性別の取扱いの変更について:その1

2022年8月15日、東京家庭裁判所立川支部に、性別の取扱いの変更について申立を行いました。

 

申立が可能になる条件

申立については、こちらの裁判所の記事が必要にして十分なので、参照します。性別の取扱いの変更 | 裁判所

 

概要にはこのように書いてあります。

家庭裁判所は,性同一性障害者であって,次の1から6までの要件のいずれにも該当する者について,性別の取扱いの変更の審判をすることができます

1. 二人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること

2. 18歳以上であること

3. 現に婚姻をしていないこと

4. 現に未成年の子がいないこと

5. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

6. 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること

 

このうち、1を除く2~6の5つの条件が、いわゆる特例法の5要件と呼ばれるものです。

 

では、特例法とはそもそもなんでしょうか。

これは、正式名称を「性同一性障害者の性別の取扱い特例に関する法律」といい、平成15年(2003年)7月16日に交付された法律です。性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律 | e-Gov法令検索

 

この法律は、そもそも下記のような趣旨のもと、制定されたものです。長くなりますが引用します。(引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%A7%E5%90%8C%E4%B8%80%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E3%81%AE%E6%80%A7%E5%88%A5%E3%81%AE%E5%8F%96%E6%89%B1%E3%81%84%E3%81%AE%E7%89%B9%E4%BE%8B%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B?wprov=sfla1

 性同一性障害は、生物学的な性と性の自己意識が一致しない疾患であり、性同一性障害を有する者は、諸外国の統計等から推測し、おおよそ男性三万人に一人、女性十万人に一人の割合で存在するとも言われております。

 

 性同一性障害については、我が国では、日本精神神経学会がまとめたガイドラインに基づき診断と治療が行われており、性別適合手術も医学的かつ法的に適正な治療として実施されるようになっているほか、性同一性障害を理由とする名の変更もその多くが家庭裁判所により許可されているのに対して、戸籍の訂正手続による戸籍の続柄の記載の変更はほとんどが不許可となっております。そのようなことなどから、性同一性障害者は社会生活上様々な問題を抱えている状況にあり、その治療の効果を高め、社会的に不利益を解消するためにも、立法による対応を求める議論が高まっているところであります。

 

 本法律案は、以上のような性同一性障害者が置かれている状況にかんがみ、性同一性障害者について法令上の性別の取扱いの特例を定めようとするものであります。

要は、性別適合手術を行い移行先の性別で認識されている性同一性障害の人たちが、社会的な性別の扱われ方と戸籍上の性別とが一致しないことにより問題が生じるので、戸籍の方を変えましょう、ということです。戸籍の方を変えるにあたって、これくらいの条件が整っていれば問題ないでしょうというのが、先程の5要件です。法律には第3条で明記されています。

ちなみにこの5要件は一度緩和されていて、「現に未成年の子がいないこと」は、最初は「現に子がいないこと」でした。(「18歳以上であること」も当初は「20歳以上であること」でしたが、これは条件緩和ではなく、成人年齢引き下げに伴い変更されています。)

 

わたしの場合

条件が分かったところで、これが私に当てはまるかを考えます。

まずは「18歳以上であること」。これはもう52歳なのでクリア。

次に「現に婚姻をしていないこと」。これも結婚してないのでクリア。

一つ飛ばして、「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」「他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること」の2つは、SRSを受けているのでまとめてクリア。

……おやおや? 一つ飛ばしましたね?

実は「現に未成年の子がいないこと」だけが、クリアできなかったのです。何故ならわたしはかつて結婚していて、二人の子供がいたから。

それがですね、2022年8月14日をもって子供が成人年齢である18歳に達したので、ようやく5要件全てがクリアになったのです。

 

ちょっと重い話をしておくと、わたしは今でこそ男が好きだし、女性と性的関係になることはないですけど、かつては自分の中の性別に対する違和が理解できず、またロールモデルとなる人を知らなかったので、男である自分は女が好きでなければいけないという強迫観念に囚われて、女性と付き合い、結婚までしました。実際には当時から好きな男がいたにもかかわらず。性別不合という概念を知らなかったが故の不幸だと考えています。

結果として二人の子供を持てたことは良かったと思っていますが、結婚生活は破綻しましたし、いろいろと不幸の種を生みました。

仮にわたしが20代のうちに性同一性障害という「病気」を知っていたら、それまでの自分の違和感の原因が分かって治療に進んだし、当時の状況からして様々な苦労をしたでしょうけど、それに見合った幸せも得ていたと思います。全ては当時そのようなものを知らなかったことが原因なので、これから同じような不幸が起きないよう、性別違和の認知につながれば良いと情報発信を続けているのです。

なお、過去に男として女と性的な関係を結んだものはGIDではないみたいなことを言う方もいらっしゃいますけど、それぞれ事情があるんですよというだけに留めておきます。

 

必要書類は意外に面倒

さて、とにもかくにも5要件を満たしたので、冒頭に書いたとおり、性別の取扱いの変更の申立を行いました。

しかしながら、提出時点で自分でも分かっていたのですが、必要な書類が足りていませんでした。戸籍謄本が。

先の裁判所のWebページには、必要書類として下記が記載されています。

(1) 申立書(6の書式及び記載例をご利用ください。)

(2) 標準的な申立添付書類

・申立人の出生時から現在までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)

・所定の事項の記載のある2人以上の医師による診断書

申立書と診断書は用意したので問題ないです。

戸籍謄本が完全に勘違いをしていて、今の戸籍がある自治体から取り寄せればそれで終わりだと思っていました。

でも違うんです。

 

私の戸籍はこうなっています。

  • 1970年に生まれて出生届が出された時に、親の戸籍に編入
  • 1997年に結婚した時、当時の配偶者を筆頭者として新たに戸籍を作成(相手の姓を名乗ったため)
  • 2014年に離婚した時、一人の戸籍として分籍(実家のある自治体で作成・離婚後も結婚時の姓を維持したため)
  • 2020年に今居住している自治体に戸籍を移動

更に、2004年頃に改製が行われたため、それ以前の戸籍は改製原戸籍となりました。

ここで、私が生まれてから現在までん戸籍をつなげようとすると、以下の戸籍謄本が必要になります。

  1. 出生時に編入された父親を筆頭とする改製原戸籍謄本
  2. 1997年に作られた元配偶者を筆頭とする改製原戸籍謄本
  3. 離婚時点の記録が残っている元配偶者を筆頭とする戸籍謄本
  4. 離婚後に実家の自治体に作った戸籍の除籍謄本
  5. 現在の戸籍謄本

あややこしい。。

まあ、この程度で済んでるのでいうほど大変でもないですが、実は申立書を提出した時点では3と5しか持ってませんでした。

5はあらかじめ取得していて、3は申立を行ったその日(しかもFFSの術前検査の後で)取りに行きました。その時点で2が必要なことに気づいておらず、後で郵送で取り寄せることに。

1は父親に依頼して取って郵送してもらったつもりが、何故か送られてきたのが4(いや、これも必要なんですけど)。何度説明しても理解してもらえず、3回目にしてようやく正しい1を送ってもらえました。

こうして全部揃ったのが8月18日。グダグダだった割に意外と早く揃えられました。お金は余計にかかったけど。揃った戸籍謄本を速達で家庭裁判所に送り、ようやく申立完了。

 

さて、この申立がどうなったか。

これはまだ審判が下っていないので、いずれ書きます。

 

 

 

顔面女性化手術・入院初日

前記事で書いたとおり、2022年8月30日にFFSを受けることになりました。

前日8月29日が入院日です。

 

コロナウィルスの恐怖

術前検査の際にも言われましたが、このコロナ禍の中、感染したら入院もできなくなります。入院までは不要不急の外出を控える。当然のことです。ですが、まあそうは言っても外出することもありますよね。

さて、入院1週間前の8月22日の夜、なんか具合が悪いなと思っていたのですが。よく朝起きてみると、なんと微熱が。。

頭が真っ白になりかけました。

ここまで業務も調整して周到に準備してきたのに、これでコロナウィルスに感染してたら全部パーだよ。

恐る恐る杏林大学医学部付属病院の形成外科外来に電話して状況を告げ、判断を仰ぐとともに、急いで抗原検査キットを買いに行き、検査。

陰性でした

もちろん、自前の検査だからちゃんとできてないとか、偽陰性とか、まだ可能性はあるので安心できませんが、とにかく少しは安心材料ができました。病院にもこのことを伝え、最終的には入院前の検査結果次第だけど、多分大丈夫でしょうと言われ。

ただし、喉がやたらに痛いです。なんか微熱も続くし。

あとから思うに、急にサプリを止めたのでビタミン不足で体調を崩し、風邪を引いたんじゃないですかね。熱が出ること自体久しぶりでしたけど、本気でどうしようかと思いました。

 

入院当日

さて当日。

朝一で形成外科外来に行き、本日入院予定のものだと告げると、検査の待機場所に案内されました。

ここから更に検査用の部屋に行き、綿棒を鼻の穴に突っ込まれて検査終了。再び待機室に。

1時間近く待たされましたが、無事陰性が証明されて、晴れて入院決定、手術も確定しました。もうここで陽性だったら仕方がないやと腹を括ってましたが、とにかくなんともなくてください良かったです。

で、入院手続きを済ませて形成外科の病棟に。

入院時の説明もそこそこにお昼ごはん。

ごはん、美味しいです。

わたしそんなに美食家じゃありませんけど、ただでさえ味気ない入院生活の中、ごはんまで美味しくないのは辛いですからね。普通に美味しくてよかった。

 

入院初日は基本的にやることがないので、暇です。

麻酔科の先生、薬剤師の方、医療チームの先生方がいらっしゃってご挨拶だのお話を伺うだのしたり、売店におやつを買いに行ったり、こうしてブログを書いたりして過ごしてました。

大島先生も回診にいらっしゃって。

先生、言うべきことははっきりおっしゃいますけど、物腰が柔らかくて、優しくて、何より男前なのがちょっと嬉しい。あちこちで大島先生は技術力もあっていい先生ですよと伺ったのですが、その上イケメン。いいですねえ。

 

あ、晩ごはんも美味しかったです。

今日はこのあとシャワーを浴びて身ぎれいにしたらもう寝るだけ。

明日は朝から支度をして、いよいよ手術です。

顔面女性化手術について

わたし、自分の顔に強度の劣等感を抱いておりまして。

元はと言えば、電車で知らないおじさんに「半魚人みたいな顔の女」って言われたところからなのですが、よくよく思い返してみると、思春期の頃から醜形恐怖に取り憑かれていたなあ、と。当時「整形したい」と言って親に怒られたっけ(遠い目)。

それはともかくとして、性同一性障害の身体治療の一つに、「顔面女性化手術(Facial Feminization Surgery/略称:FFS)」というものがありまして。読んで字の如し、MtFGIDが顔を女性の見た目に近づけるための手術ですね。SRSが普段人の目に入らない場所を手術するのに対し、こちらは顔という、人が真っ先に見る部分を手術することになります。

今後性別を変更して生きていこうとしているわたしにとって、ぱっと見の印象は大変重要です。美醜の判断とは別に、顔の印象で性別を判断するのはよくあることで、今現在服装と乳房の形である程度女性に見えることで違和感なく社会生活を営んでおりますが、更に顔を女性らしく見せられれば、マニッシュな格好をしていても女と認識されるはずです。なお、ここでは「女性らしさ」「男性らしさ」とはなにかといったルッキズム的議論はひとまず措きます。頭蓋骨の形に大きな性差があるのは論を俟たない事実なので。

 

FFSについて

では、具体的にFFSって何をするの? という話ですが、一口にFFSといっても、やることは色々あります。顔、というか頭蓋骨の形は千差万別なので、何をするのか(あるいは、何を優先するのか)は頭蓋骨の形によりまちまちです。

大まかにいって、

  1. 額から眉骨にかけての形を変える
  2. 頬骨の形を変える
  3. エラから顎先の形を変える

の3つがありますが、他にも鼻の形を変えたり、目の形を変えたり、大掛かりなものだと顎全体を引っ込めたりといったこともやる場合があります。

ここで重要なのは、「どこをどう手術するかを考えるのは自分ではない」ということです。

手術の計画は、頭蓋骨の形や全体のバランスを考慮して医師が決めるので、もちろん自分の意見も反映はされるし最終的な決断は自身で下すとはいえ、何をやるかは専門医の判断に委ねられます。ですので、まずはカウンセリングを受けて、どういう形で手術をするか、それに必要な費用はいくらか、を聞いて、やるかやらないかを決めることになります。

 

カウンセリング

ここからはわたしの場合の話です。

3月にSRS後の3ヶ月検診で山梨大学の百澤先生の診察を受けましたが、この時にFFSの相談をしました。

元々山梨大学医学部附属病院の時に形成外科のWebページには、FFSはここではやっていないので、紹介しますという旨が書かれており、じゃあ紹介してもらおうとなりました。メールをくれれば紹介しますよということだったので、早速先生にメールを送り、杏林大学の大島先生をご紹介いただきました。

で、今度は大島先生にメールを送り、初診の日取りを5月16日と決めました。

 

当日。お休みを取って杏林大学医学部付属病院に。

大島先生にお会いして、「どこを直したいですか?」と聞かれたので「正面から見たらそれほどでもないですけど、横顔のラインで額から眉にかけてが出ているので……」と応えると、「いや、正面から見ても結構目立ちますね」と一刀のもとに斬り捨てられ(笑)。たしかにそのとおりなので、遠慮なく突っ込んでくる言い方に好感を持ちました。

ほか、やはり横から見たときに口先が出ていることが気になっていたのでこれも告げると、たしかにEラインで口先が出っ張るので、例えば上下の顎を短く切り詰めることもできるけど、歯を矯正したりで時間もかかるし、年齢のことを考えるとさっさと終わらせたほうがいいから、顎先と鼻先を出して目立たなくしましょう、とのこと。

このあと、頭蓋骨のCTスキャンを取って頭蓋骨の形を見ることになりました。

 

総合病院の便利なのは、こういうときささっと必要な検査ができること。早速CTスキャンを取って、診察に戻ります。

まず額の部分ですが、骨の下に大きな空洞があって骨自体は薄いので、骨を切って周りを削り空洞の中に落とし込んで、プレートで上から塞いで人工骨で埋めます、とのこと。あとは眉骨を削って小さくします。

顎先は人工骨で盛り上げるのと、エラはそれほど目立たないけどこれも切り落とします、とのことでした。人工骨の支えにプレートを入れるけど、額のプレートはいずれ溶けるけどこっちは溶けないので、後日改めて手術で取り出します。そのときに鼻も出しましょう。となりました。

また、骨を切ったり削ったりするので、余った皮が弛みます。年齢を考えるとこれは避けられないので、手術後落ち着いたところでフェイスリフトをしたり、HIFU(ハイフ)の施術でたるみを取りましょう。とのこと。こういうことを遠慮なくおっしゃるのは本当に好感がもてます。

 

続いて、実際の手術の様子をビデオで。

額は頭頂部を切開して革をベロンとめくり、頭蓋骨を露出させて切ったり削ったりします。顎は口の中を切開してそこから器具を突っ込み、切ったり削ったり、人工骨を入れます。ということで、結構エグい動画を見せられました。グロ耐性ないと辛いかも。

費用は約130万円、日程はちょうどキャンセルが出そうなので8月末が最速になります、と言われ、この時点でほぼ決意は固まりました。後日改めて、これでお願いしますとお返事をして手術決定です。8月29日入院、30日手術、9月2日退院となりました。

 

術前検査

会社に相談し、入院期間の休暇も了承されて、準備は着々と進みます。

大島先生からは、手術日の1ヶ月前からホルモン治療を止めてくださいと言われていたので、こちらも7月23日にホルモン注射を受けたのを最後にストップ。SRSのときも術前1ヶ月はホルモン禁止でしたが、この時は頭痛に悩まされました。覚悟はしていたものの、今回もやはり頭痛が頻発して閉口しました。

そして、8月15日に術前検査です。

大島先生の診察で手術内容の最終確認があり、入院費や全身麻酔の費用も含め、総額140万円と提示されました。もちろんこれは問題なし。

それから、偏頭痛の予防として飲んでいる漢方が手術に影響する可能性があるということで、この翌日から服用禁止になりました。同じく、どんな成分が含まれているか分からないとのことで、サプリメントの類も禁止。

また、コロナ感染したら入院できなくなるということで、入院までは不要不急の外出は避けるようにとのお達しでした。

 

手術まであと2週間ということで、俄然期待が湧いてきます。どんな顔になるのかな。

性別適合手術・退院後3か月検診

ブログの更新がすっかり間が空いてしまいました。その間、特筆すべきことがなかった……わけでもありませんが、後述します。

さて、前回の1か月検診の際に予約した3か月目の検診が、3/14にありました。

 

検診の話の前に

実は今年の2月にこんなことがありました。MtFが男に捨てられた話|名古屋 よしえ|note

退院前の指導で、性生活については医師、パートナーと相談の上開始することとなっていて、記事中にも書いたとおり、本当ならこの3か月検診で相談するつもりだったのですけれど、結果としてフライングする形になってしまいました。

事後報告となってしまいますが、そのことを百澤先生にお話しして問題がなかったかを確認しなければなりません。また、場合によっては性器に傷があったりということもありえますので、いずれにせよちゃんとお話をしようと思いました。

その他、今回は下記の相談をしようとあらかじめ考えておきました。

  • 性器の形状は問題ないか
  • FFSを受けることを検討しているが、どのようにすればよいか

性器については、以前から気になっていたことがあって、クリトリス部分が普通の女性のそれより大きいのではというのが気にかかっていました。場合によっては再手術の相談もしなければなりません。

また、FFS(顔面女性化手術)については以前から検討していまして、山梨大学医学部附属病院ではやっていないが紹介するという旨がWebサイトに書かれていたので、これを聞いてみようと思っておりました。

 

診察

以上のようなことを考えながら待合室で待っていました。今回は順調に、予定時刻より前倒しで呼び出しがかかります。

まず問診で、お小水の出方について確認を受けました。前回の記事で書き漏らしましたが、1か月検診の際に同じことを尋ねられ、おしりの方に回って出ていると答えたのですが、今はきちんと前にまっすぐ出ています。それで問題なかったようで、腫れが引いてきたからきちんと前に出るようになったのだろうとのことでした。

また、ダイレーションについても質問されました。2月半ば頃から1つダイレーターのサイズを上げて、上から2番めの太さのもので、1日2回30分ずつ行っているとお話ししたところ、もうそこまで入るようになったんだね、とのお答え。

次いで、診察台で触診です。形状その他問題ないようでしたが、奥の方まで指を入れられて得心がいかない顔をされて、もうお一人の先生にも触ってみるよう促されます。

と、いきなり奥を渾身の力で痛くなるほど押されました。思わず悲鳴が口から漏れます。

「これ、まだ奥まで拡がるね」と言われました。

ちょっと意外でした。前回の検診で深さはこれ以上いかないというお話でしたし、自分でもダイレーションの手応えでここまでかな、と思っていたのですが……

診察台を降りて続きを伺いました。

「1段細いダイレーターを使ったほうがいい、それでまだ奥に深くなるはず。まだ太いのは使わなくていい」

なるほど、これは朗報です。深さが増すならありがたいです。早速帰ってやってみることにします。

 

それはそれとして、確認したい件を伺ってみました。

まず性行為について。

これはもう3か月経っているのでしても問題ないということでした。パートナーの性器の形状に合わせてダイレーターの太さを変えれば良いとのこと。そのパートナーがもういないんです、とは言えず……

次いで形状について。

小陰唇が尿道口と膣口の間に入るようになっていて、膣が小陰唇の外にあるような形になっている。これは術式の都合上どうしてもそうなるが、おかしいといえばおかしいので、気になるのであれば再手術をするのでも良い、とのことでした。

一方、わたしが気にしていたクリトリスについては、確かに大きいが、それくらい大きな女性もいないわけではない、小さく作ると壊死の可能性が高くなるのでどうしても大きくなる。再手術で小さくすることはもちろん可能、とのお話。

いずれにせよ、次の検診で検討しましょうとなりました。

最後にFFSについて。こちらは執刀してくださる先生をご紹介いただけるということで、百澤先生にメールを送って、改めてご紹介いただくことに。杏林大学で受けることになるようです。

 

次回の検診を6/20に受ける予約をして、この日は終わりです。特に問題がなければ、次で診察はおしまい、だそうです。

 

ところで、診察中に出たダイレーションの件ですが、これは別記事に改めて書き起こそうと思います。乞うご期待。

性別適合手術・退院後1か月検診

退院時に予約した1回目の通院に行ってきました。

本来、手術から1ヶ月後くらいを目処に受診するようですが、1月第1週・第2週がお休みということで、少し早めの受診です。

 

診察にて

2週間お休みがあるせいか、本日形成外科外来は大変混み合っていたようです。

予約時間から少し遅れて呼ばれまして、診察室へ。入院中すっかり見慣れた百澤先生と久しぶりの(というほど間は空いておりませんが)対面です。

さっそく診察台で下半身を診ていただくことに。当たり前ですけどその部分をお見せするわけですから、下は脱がないといけません。冬なので厚着をしているのはともかくとして、脱ぎにくい格好だと大変です。

手術から約1か月弱のわたしの膣は、全く狭窄することもなく順調、もう1段階太いダイレーターを使っても大丈夫とのことでした。わたしが一番気になっていたのは膣の深さでしたが、計測したところ約7cm、これだけあれば性交にも支障はないはず、とのことでした。これは過去いくつか、わたしより浅い膣でも問題なかった症例があったとのことでしたので、ほっと胸をなで下ろしたところです。

 

その他、一番太いダイレーターは使わなくて良い、あれはセット販売だからつけているけど実際のところ必要ない、ただ、バラで3本買うより4本セットの方が安いからつけているんだ。とのことでした。なるほど、一番太いのはさすがにちょっと太すぎるのでは、とちょっと戦々恐々としていましたが、使わなくてよいと聞いて安心しました。

 

今日はこんな感じで終始和気藹々とお話させていただき、今のままダイレーションを続けていけばよいというお話とともになんだか安心を頂いたような心地で帰って来ました。

 

さっそくサイズアップ

ということで、帰宅後、さっそく一つ大きいサイズのダイレーターを使ってみました。

使ってみると特に違和感も痛みもなく、スルッと入ってくれます。全く問題ないですね。時間も少し長めにすると良いとのことでしたので、これまで15分程度だったところを30分ほど続けました。長いと少しだれますが、それほど負担に感じるわけでもなく、これも問題なし。これからは朝晩30分ずつのダイレーションにします。

 

次回の通院は3月14日となりました。3月ともなれば少しは温かいでしょうか。痛みも収まってくる頃でしょうから、次は車で観光がてら行けたらいいなと思います。

改名について

性別適合手術の話が続いているので、たまには別の話を。改名についてです。

 

改名の手続き

改名に必要なのは性同一性障害の診断書と、変更しようとしている名前(通名)の使用を証明する証拠です。診断書は名の変更許可申立書に添付して送付します。

 

順序立てて説明すると、まずは通名の使用を裏付けるための履歴を積み上げます。通例、1年ほどの使用歴があれば良いとされるので、名前を変更する1年位前から実績を積んでおく必要があります。まあこの辺りは判断する裁判官によっても若干違うので、1年なくても大丈夫だったりしますが。なお、実績作りによく使われるのは、公共料金の契約者名とか郵便物です。公共料金の契約者名は割と簡単に変えられるのでおすすめです。

 

通名の使用実績と積みながら、性同一性障害の診断書を2通取得しましょう。ガイドラインに沿った診断を行う精神科医であれば、長くとも1年くらいで診断書が出るはずなので、通名の使用実績を積み上げ始めるのと同じタイミングで通い始めればいいのではないかと思います。

 

で、首尾よく実績作りと診断書を取得できたら、家庭裁判所に名の変更許可申立書を提出します。文面や出し方などはWebで検索すればいくつか例が出てきますが、これに従って提出すればたいてい問題ないです。

 

わたしの場合

一般的にはここまでのような流れで手続きを進めますが、実際に名を変更したわたしの場合について書いてみます。

わたしは2020年6月に申立書を提出し、同年9月に許可の審判が下り晴れて名前を変えました。申立から3か月もかかったのは異例の長さだと思われます。これはコロナ禍で家庭裁判所の業務停滞があったからのようです。普通はもっと短い期間で審判が下るはずです。

 

実際の審理の進行については、どうも他の方たちの経験談を読む限り千差万別のようです。ですので、わたしのケースはあくまで一例としてお読みください。

まず裁判所から電話がかかってきて、申立について出頭する日時調整をしました。当日出頭すると、最初に参与員の方との面談になります。ここで性同一性障害を理由とした場合は性別の移行度合などを観察されるようなので、きちんとRLEができているかを見た目で示すことができるような装いであることが必要になります。

また、通名の使用履歴についてはここで提出することになります。実はわたしの場合、ここが準備不足でして、証拠として持参した公共料金の請求書が1年に満たないものだったため、相当しつこく他に通名の使用歴を示すものがないか問いただされました。困り果てた末に、これならと出したのが、通名が記載された会社の名刺と、これを作ってもらえたと喜ぶ前年2月のFacebookの投稿でした。これはさすがに参与員の方も前例がなかったらしく受理するか逡巡していましたが、結局名刺とFacebookの投稿を表示したスマートフォンの画面を写真に収めたものを採用してくださいました。

これから改名する方には、もっとちゃんとした証拠を持参することをお勧めします。

 

参与員の方との面談終了後しばらく待っていると、別の方に呼び出され、いきなりその場で審判結果が書かれた謄本を渡されました。家庭裁判所といえど、てっきり法廷のようなところに呼び出されて裁判官が主文を読み上げるものと思っていたので、このあっさり具合には拍子抜けです。世の中そんなものなんです。

 

戸籍の変更

さて、この謄本を持って、今度は本籍のある自治体の役所に行きます。なおわたしの場合、元々本籍と居住する自治体が異なっており面倒だったため、申立書を送る前に本籍を今の住所に移しました。申立書には戸籍謄本を添付する必要があるので、一旦本籍を移動してから謄本を取得するという手間をかけました。ですので本籍が離れている方は事前に移動しておくことをお勧めします。

 

自治体の窓口に名前変更の手続きを申し出て、審判の謄本を渡して手続きは終わりです。

戸籍謄本の書き換えが行われると、今度は住民票を取得して、これを持って様々な名前の変更手続きを行うことになります。例えば免許証だとか、携帯電話の契約者名だとか、銀行の契約者名、クレジットカードの契約者名、などなど。意外に変更するものは多いですね。しかも変更手続きが各社まちまちなので面倒です。

とはいえ、名前が変更できるというのは、性別移行においてQOLを高めるのに大変有効なので、できる限り早く進めたほうが良いとは思います。呼んでほしい名前で呼ばれるのがこれほど嬉しいとは、変更するまで実感できないことでした。

退院後の生活

さて、退院から数日経ったわけですが、少し退院後の生活についてまとめておきます。

 

お仕事は程々に

退院の翌日からお仕事に復帰しました。

もちろん、普通ならちょっと無理だと思います。わたし、システムエンジニアというお仕事をしていまして、業務委託で期間契約であちこちの会社を渡り歩きながらお仕事をしているんですが、たまたま今仕事を頂いているところがリモート環境なため、自宅で働いているんですね。

通勤がないというのがまず大きくて、体に負担がかからないです。それと、キツかったら休憩しながらでいいからというお言葉に甘えて、適度に休みを取ったり、座りっぱなしが辛くなったら立ってお仕事したりと、なるべく楽なように仕事ができているので大変助かります。

そもそも業務委託の身で2週間も休んで復帰させてもらえるのがありがたい話ではあります。

今回の入院で有給休暇を使い切ったので、今休むと欠勤扱いになってしまい給与が減ってしまうので、割と必死で働いてます。もうすぐ正月休みなのが救いです。

もうすっかり日常生活に戻ってしまいましたが、まあなんとかやっていけそう、ではあります。

 

ダイレーションと洗浄の日々

退院後もダイレーションと洗浄はずっと続きます。

上に書いたとおりすっかり日常に戻っているので、これまでなかったダイレーションと洗浄を日課に組み込まなければなりません。

とはいえ、せいぜい今まで通勤がないのをいいことに惰眠を貪っていたところを少し早く起きるようにしたり、遅くまで寝ていられるからと夜ふかししてたのを早く寝るようになったりと、割と普通に健康な生活を贈るようにシフトしただけなんですけど。

唯一の誤算は、寒いので布団から出たくない、という欲求とダイレーションがストレートにぶつかってしまうことですかね。もうちょっと暖かい季節だったら良かったんですけど。

 

ダイレーションは始めてしまえばあまり苦にはならないので、苦手な人に比べると恵まれているかもしれません。ただ、深さが頭打ちになったようで、もしかしてわたしの膣はあまり深くないのではというのが目下の悩みのタネ。今度通院した時にその辺聞いてみたいと思います。

 

膣洗浄については、プチシャワー・セペがコスト高だなと思い、早くも他のグッズがないか探してみました。

結果、下記のような商品に辿り着いたので、早速購入。

実際に使ってみると、確かに使いやすいです。

使い捨てのプチシャワー・セペと違い、器具の清潔を保つ必要がありますけど、割とそこは些細な問題で。実はですね、プチシャワー・セペはコストの問題以外に、この季節冷たいんですよね……膣から流れ出る水でお尻が冷えるという。それについては、温めてから使えばよいというアドバイスもいただきました。実際にそれで問題は解決するのですけど、上の商品のようなポンプ式であればそもそもぬるま湯を入れればよいのでこの点も良いです。

ということで、膣洗浄のQOLも少し上がって快適です。

 

ホルモン

百澤先生からは、退院したらすぐにホルモン療法を再開して良いと言われていました。

手術前1ヶ月はホルモン摂取禁止ということだったので、今のわたしには圧倒的に女性ホルモンが足りていないです。

とはいえ、まだちょっとホルモン注射を受けに外出するのは辛いです。幸い以前使っていた錠剤があるので、これを使うことにしました。2週間分しかないので次も注文して、届くまで間が空いてしまうと思いますが、その間は塗布剤で乗り切ろうと思います。

 

で、久しぶりにホルモンを摂取したわけですけれども、今ひとつ効いている感がなくて少し物足りないです。まあ、今回の手術で睾丸を取り除いて男性ホルモンの分泌量が一気に下がったので、それも相まって効果が感じられないのかもしれませんが、もっとこう、ガツンと女性ホルモン摂ってる感がほしいですね。

 

今後

今のところ外出しなくて済んでいるので、退院後の生活も比較的楽です。

とはいえ、今後はお買い物に行ったり、どうしても観たい映画に出かけたりということをやりながら、更に日常を取り戻していかなければなりません。

またそういったお話も書くつもりです。