とある性別違和の記録

自分の性別に違和を感じたわたしが、性同一性障害の診断を経て戸籍変更に至るまでを綴ります

改名について

性別適合手術の話が続いているので、たまには別の話を。改名についてです。

 

改名の手続き

改名に必要なのは性同一性障害の診断書と、変更しようとしている名前(通名)の使用を証明する証拠です。診断書は名の変更許可申立書に添付して送付します。

 

順序立てて説明すると、まずは通名の使用を裏付けるための履歴を積み上げます。通例、1年ほどの使用歴があれば良いとされるので、名前を変更する1年位前から実績を積んでおく必要があります。まあこの辺りは判断する裁判官によっても若干違うので、1年なくても大丈夫だったりしますが。なお、実績作りによく使われるのは、公共料金の契約者名とか郵便物です。公共料金の契約者名は割と簡単に変えられるのでおすすめです。

 

通名の使用実績と積みながら、性同一性障害の診断書を2通取得しましょう。ガイドラインに沿った診断を行う精神科医であれば、長くとも1年くらいで診断書が出るはずなので、通名の使用実績を積み上げ始めるのと同じタイミングで通い始めればいいのではないかと思います。

 

で、首尾よく実績作りと診断書を取得できたら、家庭裁判所に名の変更許可申立書を提出します。文面や出し方などはWebで検索すればいくつか例が出てきますが、これに従って提出すればたいてい問題ないです。

 

わたしの場合

一般的にはここまでのような流れで手続きを進めますが、実際に名を変更したわたしの場合について書いてみます。

わたしは2020年6月に申立書を提出し、同年9月に許可の審判が下り晴れて名前を変えました。申立から3か月もかかったのは異例の長さだと思われます。これはコロナ禍で家庭裁判所の業務停滞があったからのようです。普通はもっと短い期間で審判が下るはずです。

 

実際の審理の進行については、どうも他の方たちの経験談を読む限り千差万別のようです。ですので、わたしのケースはあくまで一例としてお読みください。

まず裁判所から電話がかかってきて、申立について出頭する日時調整をしました。当日出頭すると、最初に参与員の方との面談になります。ここで性同一性障害を理由とした場合は性別の移行度合などを観察されるようなので、きちんとRLEができているかを見た目で示すことができるような装いであることが必要になります。

また、通名の使用履歴についてはここで提出することになります。実はわたしの場合、ここが準備不足でして、証拠として持参した公共料金の請求書が1年に満たないものだったため、相当しつこく他に通名の使用歴を示すものがないか問いただされました。困り果てた末に、これならと出したのが、通名が記載された会社の名刺と、これを作ってもらえたと喜ぶ前年2月のFacebookの投稿でした。これはさすがに参与員の方も前例がなかったらしく受理するか逡巡していましたが、結局名刺とFacebookの投稿を表示したスマートフォンの画面を写真に収めたものを採用してくださいました。

これから改名する方には、もっとちゃんとした証拠を持参することをお勧めします。

 

参与員の方との面談終了後しばらく待っていると、別の方に呼び出され、いきなりその場で審判結果が書かれた謄本を渡されました。家庭裁判所といえど、てっきり法廷のようなところに呼び出されて裁判官が主文を読み上げるものと思っていたので、このあっさり具合には拍子抜けです。世の中そんなものなんです。

 

戸籍の変更

さて、この謄本を持って、今度は本籍のある自治体の役所に行きます。なおわたしの場合、元々本籍と居住する自治体が異なっており面倒だったため、申立書を送る前に本籍を今の住所に移しました。申立書には戸籍謄本を添付する必要があるので、一旦本籍を移動してから謄本を取得するという手間をかけました。ですので本籍が離れている方は事前に移動しておくことをお勧めします。

 

自治体の窓口に名前変更の手続きを申し出て、審判の謄本を渡して手続きは終わりです。

戸籍謄本の書き換えが行われると、今度は住民票を取得して、これを持って様々な名前の変更手続きを行うことになります。例えば免許証だとか、携帯電話の契約者名だとか、銀行の契約者名、クレジットカードの契約者名、などなど。意外に変更するものは多いですね。しかも変更手続きが各社まちまちなので面倒です。

とはいえ、名前が変更できるというのは、性別移行においてQOLを高めるのに大変有効なので、できる限り早く進めたほうが良いとは思います。呼んでほしい名前で呼ばれるのがこれほど嬉しいとは、変更するまで実感できないことでした。