とある性別違和の記録

自分の性別に違和を感じたわたしが、性同一性障害の診断を経て戸籍変更に至るまでを綴ります

性別の取扱いの変更について:その1

2022年8月15日、東京家庭裁判所立川支部に、性別の取扱いの変更について申立を行いました。

 

申立が可能になる条件

申立については、こちらの裁判所の記事が必要にして十分なので、参照します。性別の取扱いの変更 | 裁判所

 

概要にはこのように書いてあります。

家庭裁判所は,性同一性障害者であって,次の1から6までの要件のいずれにも該当する者について,性別の取扱いの変更の審判をすることができます

1. 二人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること

2. 18歳以上であること

3. 現に婚姻をしていないこと

4. 現に未成年の子がいないこと

5. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

6. 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること

 

このうち、1を除く2~6の5つの条件が、いわゆる特例法の5要件と呼ばれるものです。

 

では、特例法とはそもそもなんでしょうか。

これは、正式名称を「性同一性障害者の性別の取扱い特例に関する法律」といい、平成15年(2003年)7月16日に交付された法律です。性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律 | e-Gov法令検索

 

この法律は、そもそも下記のような趣旨のもと、制定されたものです。長くなりますが引用します。(引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%A7%E5%90%8C%E4%B8%80%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E3%81%AE%E6%80%A7%E5%88%A5%E3%81%AE%E5%8F%96%E6%89%B1%E3%81%84%E3%81%AE%E7%89%B9%E4%BE%8B%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B?wprov=sfla1

 性同一性障害は、生物学的な性と性の自己意識が一致しない疾患であり、性同一性障害を有する者は、諸外国の統計等から推測し、おおよそ男性三万人に一人、女性十万人に一人の割合で存在するとも言われております。

 

 性同一性障害については、我が国では、日本精神神経学会がまとめたガイドラインに基づき診断と治療が行われており、性別適合手術も医学的かつ法的に適正な治療として実施されるようになっているほか、性同一性障害を理由とする名の変更もその多くが家庭裁判所により許可されているのに対して、戸籍の訂正手続による戸籍の続柄の記載の変更はほとんどが不許可となっております。そのようなことなどから、性同一性障害者は社会生活上様々な問題を抱えている状況にあり、その治療の効果を高め、社会的に不利益を解消するためにも、立法による対応を求める議論が高まっているところであります。

 

 本法律案は、以上のような性同一性障害者が置かれている状況にかんがみ、性同一性障害者について法令上の性別の取扱いの特例を定めようとするものであります。

要は、性別適合手術を行い移行先の性別で認識されている性同一性障害の人たちが、社会的な性別の扱われ方と戸籍上の性別とが一致しないことにより問題が生じるので、戸籍の方を変えましょう、ということです。戸籍の方を変えるにあたって、これくらいの条件が整っていれば問題ないでしょうというのが、先程の5要件です。法律には第3条で明記されています。

ちなみにこの5要件は一度緩和されていて、「現に未成年の子がいないこと」は、最初は「現に子がいないこと」でした。(「18歳以上であること」も当初は「20歳以上であること」でしたが、これは条件緩和ではなく、成人年齢引き下げに伴い変更されています。)

 

わたしの場合

条件が分かったところで、これが私に当てはまるかを考えます。

まずは「18歳以上であること」。これはもう52歳なのでクリア。

次に「現に婚姻をしていないこと」。これも結婚してないのでクリア。

一つ飛ばして、「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」「他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること」の2つは、SRSを受けているのでまとめてクリア。

……おやおや? 一つ飛ばしましたね?

実は「現に未成年の子がいないこと」だけが、クリアできなかったのです。何故ならわたしはかつて結婚していて、二人の子供がいたから。

それがですね、2022年8月14日をもって子供が成人年齢である18歳に達したので、ようやく5要件全てがクリアになったのです。

 

ちょっと重い話をしておくと、わたしは今でこそ男が好きだし、女性と性的関係になることはないですけど、かつては自分の中の性別に対する違和が理解できず、またロールモデルとなる人を知らなかったので、男である自分は女が好きでなければいけないという強迫観念に囚われて、女性と付き合い、結婚までしました。実際には当時から好きな男がいたにもかかわらず。性別不合という概念を知らなかったが故の不幸だと考えています。

結果として二人の子供を持てたことは良かったと思っていますが、結婚生活は破綻しましたし、いろいろと不幸の種を生みました。

仮にわたしが20代のうちに性同一性障害という「病気」を知っていたら、それまでの自分の違和感の原因が分かって治療に進んだし、当時の状況からして様々な苦労をしたでしょうけど、それに見合った幸せも得ていたと思います。全ては当時そのようなものを知らなかったことが原因なので、これから同じような不幸が起きないよう、性別違和の認知につながれば良いと情報発信を続けているのです。

なお、過去に男として女と性的な関係を結んだものはGIDではないみたいなことを言う方もいらっしゃいますけど、それぞれ事情があるんですよというだけに留めておきます。

 

必要書類は意外に面倒

さて、とにもかくにも5要件を満たしたので、冒頭に書いたとおり、性別の取扱いの変更の申立を行いました。

しかしながら、提出時点で自分でも分かっていたのですが、必要な書類が足りていませんでした。戸籍謄本が。

先の裁判所のWebページには、必要書類として下記が記載されています。

(1) 申立書(6の書式及び記載例をご利用ください。)

(2) 標準的な申立添付書類

・申立人の出生時から現在までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)

・所定の事項の記載のある2人以上の医師による診断書

申立書と診断書は用意したので問題ないです。

戸籍謄本が完全に勘違いをしていて、今の戸籍がある自治体から取り寄せればそれで終わりだと思っていました。

でも違うんです。

 

私の戸籍はこうなっています。

  • 1970年に生まれて出生届が出された時に、親の戸籍に編入
  • 1997年に結婚した時、当時の配偶者を筆頭者として新たに戸籍を作成(相手の姓を名乗ったため)
  • 2014年に離婚した時、一人の戸籍として分籍(実家のある自治体で作成・離婚後も結婚時の姓を維持したため)
  • 2020年に今居住している自治体に戸籍を移動

更に、2004年頃に改製が行われたため、それ以前の戸籍は改製原戸籍となりました。

ここで、私が生まれてから現在までん戸籍をつなげようとすると、以下の戸籍謄本が必要になります。

  1. 出生時に編入された父親を筆頭とする改製原戸籍謄本
  2. 1997年に作られた元配偶者を筆頭とする改製原戸籍謄本
  3. 離婚時点の記録が残っている元配偶者を筆頭とする戸籍謄本
  4. 離婚後に実家の自治体に作った戸籍の除籍謄本
  5. 現在の戸籍謄本

あややこしい。。

まあ、この程度で済んでるのでいうほど大変でもないですが、実は申立書を提出した時点では3と5しか持ってませんでした。

5はあらかじめ取得していて、3は申立を行ったその日(しかもFFSの術前検査の後で)取りに行きました。その時点で2が必要なことに気づいておらず、後で郵送で取り寄せることに。

1は父親に依頼して取って郵送してもらったつもりが、何故か送られてきたのが4(いや、これも必要なんですけど)。何度説明しても理解してもらえず、3回目にしてようやく正しい1を送ってもらえました。

こうして全部揃ったのが8月18日。グダグダだった割に意外と早く揃えられました。お金は余計にかかったけど。揃った戸籍謄本を速達で家庭裁判所に送り、ようやく申立完了。

 

さて、この申立がどうなったか。

これはまだ審判が下っていないので、いずれ書きます。